甲武信ヶ岳


 

 

☆天気

 

1日目 晴れ。 2日目 晴れ。

 

 

 

☆コースタイム

 

(1日目)

 

0812塩山=(タクシー)=0854西沢渓谷入口0905---0925徳ちゃん新道入口---1142分岐---1425木賊山1430---1446甲武信小屋---1518甲武信ヶ岳1523---1538甲武信小屋 ()

 

(2日目)

 

0330甲武信小屋0457---0627破風山避難小屋0634---0735破風山0742---0933雁坂嶺0940---1013雁坂峠1020---1221沓切沢橋---1317道の駅みとみ

 

 

 

☆行動と感想

 

 今年の雪山初山行は甲武信ヶ岳となった(本来は硫黄岳山行が予定されていた。しかし登山当日の2日前において、天気図を見る限り冬型が強まり、普段参考にしている天気予報サイトでも大荒れ情報がでていた。ただでさえ風の強い硫黄岳を、さらなる強風の中歩くのは危ないと判断し、1月に予定されていた甲武信ヶ岳を先に行い、1月に改めて硫黄岳に登ろうということで雪山メンバーの合意が取れたため、今回の山行では甲武信ヶ岳を登ることにした)。

 

 

 

 改札を出てすぐタクシーの運転手に声をかけられて、少々戸惑った。電話でしか話しておらず顔は見せていないはずなのにと思ったが、我々が登山の装いをしているからか(110Lザックを背負っており、目立っていた)などと勝手に納得したりしていた。塩山駅での冬期の登山客は少ないようである。

 

 西沢渓谷入口に到着後、予想以上の冷え込みに驚き、重ね着をして出発。途中のゲートに登山ポストがあったので忘れずに提出し、徳ちゃん新道入口から山行が始まった。もともと大量の雪がある1月半ばに行うことを想定して組まれた今回の計画だったが、前述のとおり前倒しで行ったため、山のふもとには雪が全く見当たらない。このままではただの登山になってしまうと思い、せめてトレーニングに意味を見出そうという思いで自分が先頭に立ち、ハイペースで登ったところ、すぐに汗をかいてしまった。しかもこの甲武信ヶ岳、特に徳ちゃん新道は、延々とそれなりに急こう配な登りが続く、いわゆる能筋登山道であり、雪が無いとはいえかなり体力的につらいものがあった。実はテントを担いで登山をするのが久しぶりな3人にとっては、ハードであった。

 

 それでも分岐までのコースタイムは1時間近く巻いたため、それなりに良いペースで登れたと思う。しかし分岐を超えた2000m近くから雪がちらほら見えはじめ、2200mからは本格的に雪道になった(事前にネットで情報収集をしていたので、状況は把握していたが)。早いうちからアイゼンを付けたため、滑る場面はなかったが、歩くスピードは落ちた。木賊山に到着した段階で、雪道を考慮して算出したコースタイム通りの時間で到着(巻いた1時間はどこに行った)。ラッセルだったら確実にビバークだったなと思い、雪上を歩くスピードの遅さを痛感した。次回の山行では雪上を歩くスピードも意識していきたい。

 

 甲武信小屋には3時前に到着。計画では甲武信ヶ岳には2日目の早朝、まだ太陽の出ていない時間に登る予定であった。しかしせっかく時間があるので、ということで、甲武信小屋を素通りし、甲武信ヶ岳に登頂。山頂からは、昨年計画したものの行くことができなかった信州尾根の連なりや、昨年冬期に登った金峰山を望むことができた。しかし寒くてゆっくりしてはいられず、3人で自撮りして下山。

 

 甲武信小屋に到着後、たまたま見つけたちょうどよいテントスペースにV6テントを立ち上げ、スノーフライを掛ける。夕食はチーズリゾット。美味しかった。

 

 

 

2日目)

 

 3時半ちょうどに起床。朝食はコーンポタージュと菓子パン。出発準備に関しては、テント撤収・アイゼン装着を含め時間に余裕をもって行え、メンバー全員の成長を感じた。

 

 個人的な話かもしれないが、私はスロースターターだなということを出発後痛感した。歩き始め直後から息切れ、寒さによる手先の冷えが収まらない、さらには吐き気を催すなど散々な出だしだった。思い返してみれば、昨年度冬期登山の天狗岳の際も歩き始めに同じような症状を呈していていた。その時は我慢できたが、今回はかなり気分が悪くなってしまったので、木賊山で一度休憩を入れてもらった。その後はだんだんと普段通りの体調を取り戻すことができたので、個人差はあると思うが、出だしは早めの休息を入れるのが良いと感じた。また、今回の体調不良は、冷えから来るものがあるという感覚が体感としてあり、それをメンバーに話したところ、朝暖かいスープを飲むのって結構大事なのかもね、という話が出た。冬山を登る際には気を付けておきたいポイントである。

 

 破風山避難小屋までは下りが続く。目の前に富士山に似た立派な山がそびえたっていた。前日からきれいな富士山がちらほら顔をのぞかせていたこともあり、自分はその山を富士山だと思い込んでいた。しかし、なんとその山は、破風山だった。百名山以外の山はそこまで形が美しくないという思い込みから生じたものであり、自分がどれだけ視野の狭い人間か思い知らされた一瞬であった。百名山以外にも素晴らしい山はいくらでもあるのだ。

 

破風山~雁坂嶺~雁坂峠の稜線上はしっかりと雪が積もっており、本来計画されていたような雪上での歩行が満足いく程度に行えた。特に破風山避難小屋→破風山の登り、破風山の下りでは、雪だけではなくところどころ岩が露出しており、アイゼンでは歩きにくい場面が多々あった。今年度最後に計画されている甲斐駒ヶ岳でも、雪と岩の連続が予想されており、それに向けて良いアイゼンワーク訓練になったと思う。

 

 雁坂峠からの下山道は、雪がほとんどなくアイゼンを外して歩いた。しかし雪が凍り付いているところが部分的にたくさんあり、歩くのに難儀した。特に峠沢に合流し、沢沿いを登山道が並走するようになってからは道が狭いのにも関わらずそのように滑りやすい場所が点在し、かなり危険だと感じた(片側は絶壁で、滑ってしまえば真っ逆さま)。私自身ヒヤリとする場面が多々あった。この場所を残雪期に歩く際には軽アイゼンもしくはチェーンスパイク等を携行することを強くお勧めする。

 

 また、今回私は落石に襲われた。場所は雁坂峠から下山し初めての渡渉点の少し手前。休憩中、突然メンバーの一人が「落」と叫んだ。一瞬何のことかわからなかったが、右手の斜面を見たところ中くらいの岩がかなりのスピードでこちらめがけて滑り落ちてきていた。幸い一歩手前で地面に直撃し止まってくれたのだが、バウンドが少しでもずれていたら確実にぶつかっていた。自然災害とはいえ、休憩している場所が急な崖の下あたりであったことは、こちらの落ち度かもしれない。反省としては、急な崖の下では立ち止まらないことと、誰かが「落」と叫んだら、すぐに斜面を見て避けられるか否かを判断しつつ、同時に頭を守る動作をするということが考えられる。

 

 沓切水橋から先はひたすら車道歩き。道の駅みとみまでは約1時間の歩きであった。道の駅みとみは冬期は営業停止していることを記録に残しておく。2時間ほどバス到着を待ち、そこから笛吹の湯で汗を流し、山梨市駅に向かった。

 

 

 

 今回の山行はラッセルこそできなかったものの、ある程度高度が上がったところではしっかりと雪上歩行の練習ができ、加えて全体を通して体力面でのトレーニングにもなり、内容としては非常に充実したものになった。上にも書いたように反省点もあるので、そこをクリアしつつ、次の山行につなげられれば良いと思う。残雪や落石については、今後西沢渓谷周辺を歩く際にはぜひ参考にしてほしいと感じる。

メンバーの反省

 

・荷物が重すぎた→不要なものが無いか再度チェックして削れるかどうかグループで話し合う(今回だと、大きな鍋はいらなかったかもしれない)

 

・地図・概念図・ベアリング表の作成→前日に行先変更をした関係で、国立に住む部員に前日に地図を印刷してきてもらい、当日渡すということになってしまっていた。次回以降は前もって地図を配り、できることなら概念図・ベアリング表も作成する

 

・崖の下で休憩するのは落石の恐れがあるので避けたほうが良い

 

・アイゼンの紐の末端処理をきちんとおこなう(切るなりしっかり結ぶなり)

 

・テント内で翌日の行動をきちんと全員で確認できていなかったので、雑談をする前にこれをやっておくべき。電波がつながることなら翌日の天気の最新情報もネットで確認する

甲武信ヶ岳山頂から金峰山を望む1日目 15:27 撮影者:松橋)

下山途中、若干凍り付く峠沢を渡る(2日目 12:06 撮影者 松橋)