奥穂高岳・北穂高岳(17/08/17-20)


 

☆天気

 

8/17 晴れのち曇り

 

8/18 雨

 

8/19 霧のち晴れ

 

8/20 晴れ

 

 

 

☆コースタイム

 

8/17(1日目):(新宿2225===0520上高地バスターミナル0545---0635明神0645---0735徳沢0745---0840横尾0855---0950本谷橋1000---1200涸沢(泊)

 

8/18(2日目):起床0300→停滞決定(泊)

 

8/19(3日目):起床0200→涸沢0310---0425取付点0435---0525穂高岳山荘0730---0800奥穂高岳0830---1035涸沢(泊)

 

8/20(4日目):起床0300→涸沢0430---0615北穂高岳0635---0750涸沢0900---0950本谷橋1000---1050横尾1100---1150徳沢1200---1315上高地

 

 

 

☆行動と感想

 

817日 1日目】

 

 新宿発の夜行バスを降りると、空気が清々しかった。平日にもかかわらず、上高地のバスターミナルは多くの登山客で賑わっていた。夜行バスで熟睡できなかったためだろうか、少し体が重かったが、川面に霧がかかる綺麗な景色の中を歩いていると、疲れを忘れることができた。

 

 横尾まではひたすら平坦な道を歩き続けた。横尾を過ぎると少しずつ登りが始まり、本谷橋の下の沢で休憩した後は急登となった。距離としてはずいぶんと涸沢に近づいているのだが、樹林帯のためなかなか穂高連峰を望むことはできず、風も通らず暑かった。Sガレを過ぎ、このダラダラとした登りはいつまで続くのかと嫌気が差し始めたころ、ようやく穂高連峰と涸沢のテント場が見えた。

 

 涸沢は写真では見たことがあったが、実際に生で見てみるとそのスケール感に圧倒された。3方向に穂高連峰がそびえ立ち、ゴツゴツした岩と緑、残雪の白のコントラストが美しく、まるで壁に描かれた絵を見ているかのようだった。うっすらと霧に包まれた山頂を見上げて、こんな急斜面を登っていくのかと考えると、少しの不安と大きな期待感を覚えた。時間に余裕があったので、涸沢ヒュッテのデッキで休憩した。涼しい風に吹かれながら穂高連峰を見上げてのんびりするのは、なんとも贅沢な時間だった。

 

 

 

818日 2日目】

 

 3時に起床したものの、前日に見た予報通り雨が降っていた。朝食を食べながらしばらく待機していたが、フライに打ち付ける雨音は強くなるばかりだった。こんな天気の中、岩場やハシゴを通過するのは不安だったので、今日はこのまま停滞することにした。

 

 二度寝した後は、ずっと文庫本を読んでいた。本を読んでいると、思っていたよりすぐに時間が過ぎていった。午後になって雨がやんできたので、テントから出て少しストレッチをした。翌日の天気予報は良くなってきており、ついにアタックできそうだと期待が高まった。

 

 

 

819日 3日目】

 

 起床後テントから出て空を見上げると、星が出ていた。これは山頂からの景色も期待できるかもしれないと思うとワクワクした。2人しかいないので、朝食の準備も時間がかからない。ザイテングラートの取付点で日の出を迎えるように、時間を見計らって出発した。

 

 歩き始めはパノラマコースを進もうとしたが、すぐに雪渓上で斜面へ取り付く場所を見失った。暗闇の中でヘッドランプの光だけではどうにもならず、少し戻って涸沢小屋を回って登ることにした。涸沢小屋を過ぎるとだんだんと道が岩っぽくなってきたが、ペンキのマークもしっかりあり、特に歩きにくい箇所はなかった。

 

 ザイテングラートの取付点を過ぎると、手も使って登るような大きさの岩も出てきた。ここからはよく事故も起きている場所だと気を引き締めた。だが、想像していたよりは普通の登山道で、特に難儀することもなかった。

 

 コースタイムより30分ほど早く、穂高岳山荘に到着した。小屋の前から下を見下ろそうとするが、ガスで何も見えない。以前ガイドブックで見た写真では、小屋から山頂方面へとハシゴが見えていたが、そちらを見てもやはりガスで真っ白だった。予想以上に天気が悪いので、ガスが抜ける可能性にかけてしばらく待機することにした。粘ること2時間、ガスは抜けるどころかだんだんと濃くなってきてしまったので、諦めて山頂へと向かうことにした。

 

 小屋から先は、ハシゴや岩場がある一番の難所と聞いていた。無事に通過できるか、出発前から少々不安に感じていた。しかし、登り始めると何も難しいと感じる箇所はなく、逆に拍子抜けしてしまった。(もしガスが無く下まで見渡せれば、高度感が出て少しは怖いのだろうか。)気付くと山頂に到着しており、辺りの景色はガスで皆無だった。山頂に設置されている眺望を説明する看板と周囲の霧を見比べながら、笑うしかなかった。別パーティの坂本たちが歩いている常念山脈の方を見て(霧で何も見えないのだが)、あちらも天気が悪いのかなと心配になった。とはいえ、景色が無くても奥穂高に登頂できた達成感は大きかった。自撮りで写真撮影を済ませ、山頂を後にした。

 

 下りも順調に歩くことができた。涸沢が近づいてきたころ、奥穂高の方を振り返ると雲が取れ始めていた。今まで、朝だけ晴れていてだんだんと雲が増えていくという経験は何度もしてきたが、今回は運が悪かった。晴れていく様子を見ると悔しくなってくるので、なるべく後ろを振り返らないようにひたすら歩いた。

 

 テント場に到着してもまだ午前中だった。暇なので、行動食のミックストレイルを食べながらのんびりと本を読んだ。山で本を読んで過ごす時間は格別だと思った。

 

 

 

820日 4日目】

 

 1日停滞した分、最終日に北穂高へのアタックと上高地までの下山を一気にやってしまうことになった。だが、前日から原島が腰の痛みを訴えており、結局一晩寝ても治らなかった。天気も良く、このまま北穂高岳に登らないで帰るのももったいないので、原島にはテントで待機してもらい、僕一人で北穂高に登頂することにした。(僕は原則として安全面を考え単独行は避けているが、今回は比較的人が多いコースであり、ピストンで戻ってくることができるということで登頂することにした。)あまりにもコースに人が少ないと不安なので、周囲が明るくなり始めるタイミングを待って登頂を開始した。

 

 本格的に登山を始めて4年目になるが、単独行は高尾山を除いて初めてだった。2年生の頃からずっと後ろに部員を引き連れて歩くことがほとんどだった僕にとって、一人で山を歩くことは新鮮だった。パーティ全体のペースなど考えることが減った分、いつも以上に周囲の景色などをじっくり楽しむことができる気がした。一方、誰も話し相手がいない中歩き続けるのは少し寂しい気もした。

 

 登り始めから終始足は軽く、ペースが落ちることはなかった。木々など視界を遮るものが少ない斜面のため、前にはこれから自分が辿っていく道筋が見え、後ろを振り返ると小さくなっていく涸沢のテント場が見えた。自分がどんどん標高を稼いでいることが目に見えてわかり楽しい。南稜取付点を過ぎたあたりだっただろうか、奥穂高の方を見上げるとモルゲンロートで穂高連峰が赤く染まっていた。(涸沢は日の出の際、太陽が出るよりも先に穂高連峰が赤く照らされる。)あまりに綺麗だったので思わず立ち止まり、しばらく眺めながら写真を撮った。さらに標高を上げると、南側から東側にかけての山々の向こうに雲海が見えてきた。山頂から見える景色があまりにも楽しみで、小休憩の時間も惜しいほどだった。

 

 涸沢を出発してから1時間45分、コースタイムの約半分ほどで山頂に到着した。山頂には誰もおらず、周りを見渡すとただただ大パノラマが広がっていた。北西には今年の夏に合宿を行った雲ノ平方面の山々、東には去年の合宿で歩いた常念山脈、遠くには雲海の上に浮かぶように一昨年の夏に登った北岳・間ノ岳・富士山が見えた。ここからの景色で、今まで登った山々の総復習ができた。そして、北には人が歩けるとは到底信じ難いような険しさをもつ大キレット、その奥には鋭く尖った槍ヶ岳が見えた。これまでも様々な場所から槍ヶ岳を見てきたが、ここまで大きく美しい槍ヶ岳は見たことがなかった。夢中で写真撮影をして、すぐに下山してしまうのも勿体ないので、行動食を食べながら少しのんびりした。下山するのが惜しかったが、涸沢で一人待っている原島に心配をかけないようにと思い、意を決して下山を始めた。

 

 下りも特に難所はなかったので、スピード重視で足早に進んだ。下山中、山頂で見た槍ヶ岳の姿を思い出しながら、卒業するまでに何とかして槍ヶ岳に登りたいと考えた。涸沢で原島と合流してテントの撤収をし、上高地へ向けて下山を開始した。再び重くなった荷物と北穂高ピストンの疲れのせいで足が重かった。上高地に着くころには、もう今日は歩きたくないと思った。じゃんけんで負けた原島にバスのチケットを確保してもらってから、温泉に入ってわさび肉まんを食べた。毎回思うが、下山後の温泉とご飯のために山に登っているといっても過言ではない。帰りの長い鈍行列車の中で、原島と秋に槍ヶ岳に登ろうという話になった。ひとつ山に登るとまた登りたい山が出てくるのだから、登山には終わりがないな、と思った。

 

 

 

【総括】

 

 奥穂高・北穂高ともに、涸沢からの往復であれば想定していたよりもずいぶんと簡単だった、というのが正直な感想だ。だが、現実として事故が多発しているコースであることに間違いはないので、ある程度山での経験を積んだ上で、ヘルメットなど安全対策をして登ることが望ましいと思われる。(周囲の登山客もヘルメットをしている人が多かった。)

 

 山岳部で登山をしているなら奥穂高くらい登って卒業したいという想いで、僕の中の夏山の集大成として設定した個人山行だった。しかし、終えてみると槍ヶ岳という新たなターゲットが見えてきた。今度はぜひ、あの槍の先に立ってみたい。

 

涸沢テント場から穂高岳を望む(8月17日11:53)

穂高岳山荘先のハシゴ(8月19日7:28)

朝日に照らされる穂高連峰(8月20日5:22)

北穂高岳山頂より、大キレットと槍ヶ岳。写真左手は雲ノ平方面。(8月20日6:28)

北穂高岳山頂より、常念山脈(8月20日6:29)

北穂高岳山頂より、富士山と白根三山(8月20日6:35)