槍ヶ岳(偵察合宿)9/2~9/4


 

☆天気

 

9/2 (1日目) 曇り

 

9/3 (2日目) 曇り時々晴れ。

 

9/4 (3日目) 小雨

 

 

 

☆コースタイム

 

0日目)新島々で前泊

 

1日目)新島々0600===0640上高地バスターミナル0655---0739明神分岐0743---0830徳沢0835---0848新村橋---0926横尾0938---1022一ノ俣1028---1057槍沢ロッヂ1123---1148ババ平キャンプ地1200---1218大曲1229---1419水俣乗越1444---1617ヒュッテ西

 

2日目)ヒュッテ西岳0556---0730水俣乗越0743---0940ヒュッテ大槍0948---1044槍ヶ岳山荘1129---1157槍ヶ岳1211---1239槍ヶ岳山荘1257---1314殺生分岐---1328坊主の岩小屋1313---1401天狗原分岐1407---1433大曲1441---1455ババ平キャンプ地1500---1516槍沢ロッヂ1529---1551一の俣1559---1631横尾1648---1725新村橋---1735徳澤1745---1822明神分岐1830---1914河童橋手前---1930小梨平ケビン泊

 

3日目)小梨平ケビン0710---0725上高地バスターミナル0750===0950松本着、解散

 

 

 

 

 

☆行動と感想

 

0日目)

 

 松本で前泊する予定であったが、松本周辺のホテルが埋まってしまっていたので新島々のゲストハウスに泊まった。6条和室でコンビニも近く、温泉まで送迎バスがついており、今までにないような素晴らしい前泊であった。今後上高地に朝早くいく場合は、新宿から夜行バスを使うのもよいと思うが、松本や新島々辺りで前泊すると翌日万全の状態で登ることができる。特に夏休みの期間は18きっぷで交通費を浮かせることもできるので、ぜひ一度現地での前泊も考えてみてほしい。

 

 

 

(1日目)

 

今回の合宿の目的は、表銀座・裏銀座の難所である東鎌尾根、西鎌尾根を経由して槍ヶ岳に登るルートを偵察し、今後表銀座・裏銀座を完走するようなルートを部の合宿で行う参考にするというものであった。当初の計画では、1日目に上高地からアプローチしババ平キャンプ場泊、2日目に東鎌尾根経由で槍ヶ岳に登り、槍ヶ岳山荘でテント泊。そして3日目に西鎌尾根経由で新保高温泉に下山するという予定であった。しかし台風が3日目午後に長野県に直撃する予報が出ていたので、前泊の宿の畳で地図を広げ計画を再考した。ここで出た案は、①天候が持ちそうなら計画通り進む。②1日目ババ平キャンプ場泊。2日目は計画通り進み、余裕があれば双六小屋まで行って最終日の下山を早める。③2日までは計画通り、3日目は槍ヶ岳山荘から殺生小屋経由で下山、というものであった。④初日に殺生小屋経由で槍ヶ岳山荘まで行ってしまうという案もあったが、それだと初めから西鎌尾根、東鎌尾根のどちらかには行けなくなってしまうので、天候が持てば両方いける可能性のある①~③のどれかで行こうということになった。

 

 当日朝、宿入口でバス停に向かおうとしていると、ちょうどタクシーが通りかかり、そして我々の前で停車した。「上高地まで行くの?こっちも今から車を上高地にあげるところだから、のせてってやるよ。バス代と同じでいいから。」こんなに良い話があるのだろうか。win-winとはこのことを言うのだろうなと思う一方で、乗車予定だったアルピコ交通バスに申し訳なさも感じつつタクシーに揺られること40分。予定よりも30分ほど早く上高地に到着した。

 

 上高地から横尾の道は、今回のメンバー3人とも今年度夏合宿で行ったことがあり、特に僕は調整合宿の下山の時バスに間に合わせようと爆走し大変疲れた苦い思い出があったので、正直早く終わらないかなと思っていた。まさか明日も同じようなことをするとは知らずに…

 

 天気予報を見ながら進んでいたが、どうにも台風は若干スピードを上げ、3日目午後すぐには長野県に直撃しそうだということがわかってきた。ルートについて話し合いながら歩いていたところ、ふと良い案がでてきた。横尾まで良いペースで歩けていたので、⑤今日のうちにババ平キャンプ場を越え、ヒュッテ西岳に進む、というものだ。こうすることによって明日の行程を約2時間短縮でき、2日目のうちに西鎌尾根を完走もしくは少なくとも行けるところまで行って戻ってこられるだけの時間を確保できることになる。そして2日目に槍ヶ岳山荘に泊まった場合は上高地に降りようということで話がまとまった。良い案だと思われ、即決しそうになったが、とりあえず槍沢ロッヂで冷静に考えようという話になり、そのまま進んだ。

 

 槍沢ロッヂに問題なく到着したが、休憩していると小雨が降り始めた。⑤の案で行けば3日目すぐに下山でき、台風のリスクも減らせるということが決定打となり、天候に不安は残るが⑤案で行くことになった。

 

 そこから大曲までは平たんもしくは若干の登りという感じで拍子抜けするほど楽な道であった。しかし大曲→水俣乗越間は傾斜がかなりあり、だいぶつらい思いをした。さらに、メンバーの一人が体調不良を訴え、途中大休止を何度も取ったりゆっくり歩くなどした結果、思うように進めなかった。途中槍沢ロッヂまで撤退することになりそうであったが、何とか歩いて水俣乗越にたどり着いた。

 

 水俣乗越で30分弱の長めの休憩をとり、体調もだいぶ良くなったということで、先に進んだ。水俣乗越→ヒュッテ西岳の登山道は、鎖の無い急な岩場の登りや、痩せた部分、さらには滑りやすく持つところもない木の階段など危険個所がたくさんあった。翌日登った東鎌尾根よりも難しいとすら感じる。

 

 ヒュッテ西岳には4時過ぎに到着した。上高地から登ってきたことを山小屋の人に話すと驚かれた。携帯の歩数計では19kmほど歩いたことになっており、だいぶ歩いたなという感じであった。夕食はトマトとサバのペンネであった。事前に必要な水の量を調べていなかったようで、スープのようになってしまう。薄味で食べられないというものではなかったが、水の量は調べておきたい。皆疲れていたので、持ってきたトランプでも遊ばずすぐに寝た。

 

 

 

2日目)

 

2日目は4時半起床。先輩の体調がよくならず、西鎌尾根を全員ですすむことは諦めざるを得なかった。

 

 昨日難所だと感じたヒュッテ西岳~水俣乗越は、逆方向に進む分には危なげなく進むことができた。とはいえ普通の道よりは危険なところは多々あるので、慎重に進んだ。

 

 水俣乗越にたどり着き、いよいよ東鎌尾根に入る。東鎌尾根は急坂というよりも長い梯子の連続であり、かなりの難所というものは少ないような印象を受けた。ここよりも昨日の水俣乗越→ヒュッテ西岳間のほうがよほど難しい。しかし危ないなと思われる場所も存在し、特に3連梯子を下った先にかなり細い道が続いている場所が一番怖かった。昨日の水俣乗越→ヒュッテ西岳のことも考えると、少なくとも1年生は表銀座で槍ヶ岳を通して歩くのは難しいなと感じた。上級生でも山にあまり行っていないような人も難しいのではないかという感じであった。

 

 ようやく東鎌尾根を通り過ぎ、ヒュッテ大槍に到着。朝は曇っていたもののここにきて晴れはじめ、槍ヶ岳の全貌が間近に見えた。槍ヶ岳は今までに見たこともないような重量感と圧迫感、そして威圧感を発していた。晴れ始めたので、僕たちは良いムーブが来たなどとはしゃいでいた。

 

ヒュッテ大槍から槍ヶ岳山荘の道のりも岩場続きであり、初心者を連れてこられるような場所ではないと思った。あまり経験がなければ、殺生小屋経由で登る一般的な槍ヶ岳登山ルートで登ることをお勧めしたい。

 

 途中まで晴れていたので槍ヶ岳頂上からの展望を期待していたが、槍ヶ岳山荘に近づくにつれて曇りはじめ、山荘に到着するころには辺り一帯が曇ってしまい、真っ白になってしまった。晴れるまで山荘でしばらく待っていたが一向に晴れそうにない。仕方なく雲の中槍ヶ岳を登った。急ではあったが、梯子や鎖、さらには手掛かりとなる鉄杭が多数あったのでそこまで登りにくいということはなかった。山頂に到着すると、すでに何人かが頂上でゆっくりしていた。頂上は狭く混雑すると聞いていたのでどんなものかと思っていたが、居心地はかなり良かった。槍ヶ岳山頂で雲が晴れるまで待ってみたが、ここでもやはり雲が晴れることはなく、降りることに。下りに関しては、手掛かりはあるもののそこまで早く下れるような場所ではなく、パーティ全体ではゆっくりとした足運びになった。

 

 台風を避けるため、また先輩の体調不良もあり、西鎌尾根は諦め、槍沢ロッヂまで下り、時間に余裕があれば横尾まで下山するということになった。槍ヶ岳山荘→殺生小屋分岐→坊主の岩小屋の下りは、コースタイム半分ほどで進むことができたので、うまくいけば上高地まで行けるのではという雰囲気になった。上高地に下山後、その日のうちにタクシーなんなりを読んで松本まで降りることができれば4日に台風直撃で松本に幽閉されることもなくなるばかりか、温泉に入れるということもあり、パーティの士気は一気に上がり、歩くスピードはさらに加速した。

 

 順調に下り、槍沢ロッヂに1515分ごろ到着。上高地まで行くにはあと4時間ほどかかる計算であり、最後は暗くなりそうだったが、横尾より先はもはや登山道ですらないため暗くてもヘッドライトで進めるという判断でそのまま上高地まで進むことにした。早く下山したいので、槍沢ロッヂ→上高地は爆走した。今後恒例になりそうで怖い。話のネタも尽き黙々と進んだ。最後の明神→上高地は暗かったが何の問題もなく進んだ。

 

最後河童橋手前のトイレ前ベンチに7時過ぎに到着。とどまっていると先輩の体調がどんどん悪くなってきた。タクシーを呼ぼうとするが、釜トンネルが環境保護のため7時で閉鎖されてしまうため呼ぶことができず、上高地の温泉も夜7時で閉まっており、なすすべがなかった。そうこうしている間にも先輩がひどくつらそうにしているので、小梨平の山小屋で泊まることにした。小屋の受付時間も過ぎており、万事休すかと思われた時、親切な宿泊者が心配して話しかけてくださった。事情を話すとキャンプ場の受付の人が滞在しているところまで案内してくれ、結局小屋に泊めてもらうことができた。本当に感謝である。この日の総歩行距離は22.4kmという前例のないような長い距離をハイペースで歩いたことになる。3人とも本当によく頑張ったと思う。小屋の炊飯器で炊いたお米で食べたカレーライスはおいしかった。

 

 3日目は起床後上高地から松本まで行き、2人は高速バスで、一人は特急で帰宅。台風の影響で帰宅できないかと危ぶまれたが、前日に上高地まで下山していたため、ぎりぎり台風を避け帰宅することができた。

 

 

 

(まとめ)

 

今回の合宿も、今年度の他の夏合宿と同じように台風の影響を受け、予定通り進むことができなかった。しかし、台風の影響を考えて現地で柔軟にルートを考え、最適と思われるものをパーティで考え選ぶ経験をすることができたのは良かったと思う。西鎌尾根は行くことができなかったが、東鎌尾根に加えて本来計画されていなかった水俣乗越~ヒュッテ西岳の道のりを偵察し、槍ヶ岳を登頂、さらには実質12日で総歩行距離41km弱という長いルートを完走できたのは、メンバー3人が思っている以上に良い経験になったのではないだろうか。体調不良者に対する手当、また最終日上高地でなすすべがなかったことは反省点であるが、それを含めても、記憶に残る山行であった。

 

 

東鎌尾根での危険個所 (9/3 08:16 撮影者:松橋)

 

 

槍沢ロッジ付近の登山道から槍ヶ岳を望む。(9/3 1013 撮影者:松橋)