雪渓訓練(18/05/12.13)


 

☆天気

 

1日目 晴れ

 

2日目 午前中:曇り時々雨。午後:雨

 

 

 

 

 

☆コースタイム

 

5/12国立駅0513===0850水上駅0900===0920谷川岳ロープウェイ駅…0950ロープウェイ天神平駅---1130天神峠周辺の斜面で訓練開始、1600訓練終了

 

 (宿泊組) 1600訓練終了---1900夕食後就寝

 

 

 

5/13 0430起床朝食0605---0640熊穴沢避難小屋0650---0720天狗のたまり場---0842谷川岳トマの耳---0855谷川岳オキノ耳---0905谷川岳トマの耳0910---0947天狗のたまり場---1005熊穴沢避難小屋1015---1045天神峠周辺テント場11301200谷川岳ロープウェイ駅1320===1340水上駅1420

 

 

 

 

 

☆行動と感想

 

 

 

・一日目

 

初日は7名が部室に前泊し、他2名は自宅から現地に向かった。普段は中央線に揺られていれば現地に到着するため乗り換えも少なく、ゆっくり眠ることができるが、今回は乗り換えが多く、また車内も込み合っていたため落ち着かない朝であった。

 

 谷川岳ロープウェイ駅で佐藤さん、兵藤さん、前神さんと合流する。軽く自己紹介とこれからの行動予定についてミーティングしたのち、ロープウェイで天神平まで向かう。天神平ロープウェイ駅周辺の積雪量は訓練を行うのには十分ではなかった。登山客によると、1週間ほど前のGWから急激に雪解けが進んでいたそうだ。事前に佐藤さんが下調べを行ってくださってはいたのだが、訓練に適した斜面やテント設営場所を探すのに時間を使ってしまった。結局天神峠周辺で良い場所が見つかったのだが、そこまでたどり着くためにアイゼン無しで斜面を進むというような場面があった。訓練に入る前の段階であったために、皆難儀し、特に一年生は滑らないよう必死な様子であった。

 

 訓練は11時半ごろから開始された。訓練内容は以下のとおりである。

 

 

 

   ツボ足での雪上歩行体験

 

3班に分かれて、それぞれの班のリーダーが先頭に立って自由に斜面を歩き、適宜OBから指導をしていただく形式であった。キックステップを意識して歩くこと、大股でなく小刻みに足を動かすこと、下りの時は腰を引かずまっすぐ立つよう意識すること、等の指導があった。雪に慣れていない12年生は滑ってしまうことが多く転倒する場面も多かった。「下りの時にはかかとから地面に足をつける」という指示をいただいた。雪山をやっている私自身としてはこの感覚はよくわかるのだが、1年生は自分の中でうまく呑み込もうと努力する姿は見えるものの、難儀しているようであった。

 

この訓練の趣旨は雪の歩行に慣れることである。時間も30分とたっぷりと時間が割かれたこともあり、初心者も慣れていったと思う。

 

 

 

   アイゼンでの雪上歩行体験

 

アイゼンの装着でやや時間をとってしまった。同じレンタルショップでも種類の違うアイゼンを貸し出していたようである。レンタル用品が届くタイミングを考えると、部会で一堂に会してアイゼンの付け方を伝達することは難しいように思われる。各自家に届いた取扱説明書をしっかりと読み、自宅で一度取り付けてみることを来年度からは徹底したほうが良い。

 

   フラットフッティングを意識して歩くように指導された。ツボ足時に比べたときのアイゼン装着時の安定感を部員は実感できたと思う。訓練時間は短めで、1015分程度であった。

 

 

 

   ピッケルを用いた制動停止訓練

 

斜面上に安全用のロープを張り、その上からロープに向かって疑似的に滑落し、ピッケルで制動停止する訓練である。①尻もちをついて足から滑落した場合、②頭からうつぶせの状態で滑落した場合、③頭からあおむけの状態で滑落した場合、の3つのケースが想定された。③の体制で滑り落ちるのは非常に怖かったが、ここが一番盛り上がった。時間は50分~1時間ほどであった。

 

 素早い動作を心掛けること、ピックの部分は持ち上げること、足は地面につけない事、等を意識しなければならないのだが、すべて同時に考えるのは難しく、OBの方から指摘を受ける部員も多かった。

 

ピッケルの種類について、部室にはシャフト(柄の部分)がまっすぐな縦走用のものと、シャフトが湾曲しているアイスクライミング用のピッケルが混在している。制動停止の際にはピックの部分を上に向ける必要がある(こうすることによってピックの反対側にあるブレードがより深く雪に刺さる)。この動作をするのに、シャフトが湾曲しているアイスクライミング用のピッケルだと十分にブレードが刺さらないので、縦走の際にはシャフトがまっすぐな縦走用ピッケルが望ましいとのご指摘をいただいた。来年度以降も雪渓訓練を行う場合には、縦走用ピッケルを持参されたい(部の備品で足りないときはレンタルするなどして)。

 

 

 

   危険個所フィックスロープによる通過訓練

 

 ロープをスリングとカラビナで両側の木に結びつけて、危険個所を渡るための補助として用いる方法について学んだ。体に装着したスリングにつけたカラビナに、フィックスロープを通すことで安全に渡ることができるようになる。

 

 ロープの結び方(ダブルフィッシャーマンズノット等)の知識がないと結ぶことができないので、ロープの結び方は別途学んでいかなければならないと感じた(今回は登攀チームが主導して結び方を伝えてくれる形式であった)。

 

 

 

   搬送訓練

 

ザックとスリングを用いて安定姿勢でけが人を背負う方法、ザック3つをカラビナ・スリングを用い連結させて簡易担架を作成する方法の2種類について学んだ。特に2つ目の簡易担架は合計6人で一人を運ぶ形となり、重さが分散されるので要救護人を搬送するのに現実的に思われた。

 

 

 

以上が雪渓訓練初日の内容である。 

 

日帰り組は帰宅。宿泊組は食事をとり、就寝。

 

 

 

 

 

 

 

・二日目

 

 430分ごろ起床し、朝食後6時ごろ出発した。最初はアイゼンを装着していたが、雪の量が少なくすぐに外した。しかし、その後熊穴沢避難小屋まではところどころ細い道があり、雪も残っていたため細心の注意を払って進まなければならない場面もあった。

 

熊穴沢避難小屋を過ぎてからはあまり雪もなく歩きやすかった。天狗のたまり場を過ぎてから、夏山一般道から東北方面に逸れる形で冬山コースが伸びており、我々はアイゼンを装着して冬山コースを進んだ。単調な登りであった。雪解けが進んでおり、ところどころクラックもあった。佐藤さんにクラック・クレバス・シュルンドについて教わったりした。

 

 谷川岳肩の小屋に到着後、アイゼンを外した。谷川岳トマの耳、オキノ耳を登頂したころには雨がぽつぽつと降り始めたので下山を急いだ。

 

 下山時には、谷川岳肩の小屋でアイゼンを装着し途中までは冬山コースを歩いたが、三宅のアイゼンが6本歯であり滑りやすく、本人も斜面を下るより夏山縦走路を歩いたほうが安心であるという要請があったため、夏山縦走路を使った。テント設営場所に到着し、各自片づけを行った。雨が降っていたこともあり片付けにだいぶ時間がかかってしまった。1日目帰宅組の装備を一部2日目組に受け渡しており、それをザックに詰める作業に難儀したためであったが、それにしても時間がかかってしまった。意識して撤収のスピードを上げていかなければならないと痛感した。撤収が終わるころには雨も本降りになっており、急いでロープウェイ駅まで戻った。

 

 反省点としては、テント設営場所~熊穴沢避難小屋間の登りの際、2度手間と考えずもう一度アイゼンを付けなおすべきだったのではないかということが挙げられる。テント設営場所から出発してすぐに外してしまったが、危ないと感じる場所があれば面倒くさがらずもう一度装着しなおすべきである。そもそもアイゼンの装着が面倒だと思うことの原因として、アイゼンの装着速度が遅いことがあるのではないだろうか。アイゼンの装着速度はOBの方からも指摘をいただいた点である。自宅で何度もつけてみるなどして練習することは、時間短縮の意味だけではなく安全面からも必要であると感じた。

 

 

 

 

 

 

 

☆訓練についての総括

 

 今回の訓練は雪山の経験がない主に一年生を対象にしたものである。目的としては、①今年度は一年生が主に参加する夏合宿において雪渓を歩くことが予想されていたので、その事前準備として、②12月に始まる冬期山行に参加するかどうかの判断材料にしてほしい、という点が挙げられる。その他の部員に関しても、③冬山登山に関しての基礎知識の習得、またこれに加えて、④せっかくだから谷川岳に登りたい、という側面もあった。

 

 夏山雪渓を歩く上においては、今回の訓練は十分すぎるほどの内容であったと思う。雪上歩行に関しては、経験しないで現地に行くのといかないのでは大きな差がある。一方で、白馬の雪渓といったところは雪渓訓練などの準備をせずに向かう登山客が大多数であるようにも思われる。このように考えると、一年生に関しては①よりも②の側面が大事になって来るのではないか。今回の訓練では、歩行訓練や制動停止訓練にかなりの時間を使ったが、一年生にとっては、雪の上を歩く具体的なイメージが湧いたことだと思う。また、ピッケルを用いた制動停止訓練に関しては、実際の冬山登山では起きて欲しくない事態ではあるが、一番盛り上がったところでもある。このような経験を1度でもすることは意味のあることだと思うし、冬期登山をするかしないかの判断の際にプラスに働くと思われる。費用を考えると今後も全員参加とするのは難しいとは思うが、私個人的には来年度も何らかの形でこのような雪を体験する機会を設けてもよいと思う。

 

現在の我々の冬山登山のレベルを考えれば、今回の訓練内容が身についていれば、12月から始まる冬期登山も問題なく参加できると思う。しかしビーコンを用いた捜索訓練やロープワークなど、冬山登山を部活として必要とされる技術はまだまだ足りていない。外部講習にも参加してみるのもよいと思われるし、この意味では国立登山研修所の冬に開催される訓練に人を送り出す意味もあると思う。

 

 

 

最後になりますが、訓練にご協力していただいた佐藤さん、兵藤さん、前神さんに深く感謝申し上げます。

 

 

雪上歩行訓練の様子。(撮影者:松橋)

 

 

制動停止訓練の様子。(撮影者:松橋)