2018年度 年次報告

 2018年度主将 坂本遼


山岳部主将として務めたこの1年は、数年前から始まった部内変革期を引き継ぐものであったが、内海主将から受け取ったバトンをしっかり受け継ぐことができるのか、不安を抱えつつのスタートだったように思う。大学院入試を控えた身で全ての活動の先頭にいることができない中、無事役割を全うできたのは、副将安藤や運営会メンバーはじめ、後輩たち全員の理解と協力があったからに他ならない。大変感謝している。


 当部の活動は夏季の縦走合宿を軸に年間計画が組まれているが、昨年の反省を踏まえ、本年はレベル別に3つの合宿を設定し、より部員11人の参加機会を多く設けようと試みた。これに向けて新歓終了後から時間をかけて念密な計画を策定していたが、実際行ってみると様々な課題が見えてきた。やはり反省すべきは、新入部員の参加回数を増やすことができず、十分な経験を積ませることができなかったことであろう。上級生が、各自の挑戦と後輩を引率することの両立に苦労していると思われる。これを受けて、来年度はベースキャンプを用いた定着山行が提案されているようであるが、上級生と下級生で経験に差がある中で、どう各自のレベルアップを図っていくかについての解決策は今後も模索していく必要がありそうだ。反省点もある一方で、本年は南北両アルプスに積極的な縦走山行が実施され、天候には恵まれなかったものの、部員各自の挑戦が感じられたのは嬉しいものであった。来年度でのリベンジをしたいという声も聞こえていたので、是非実施してもらいたい。


従来からの雪山登山に加え、本年は有志の登攀チームが結成され活発な活動を行うことができたのは特筆したい点である。部内での経験値が少ない中で、いかにして安全性を確保するのか、OBの方々や外部のコーチなどにも意見をいただき、時には同行いただきながらの挑戦となった。強い熱意を持ち続けて最終的な目標としていた山行を行うことができたのは本当に良かったし、部としても大きな経験となったであろう。もっとも初めての試みを行うにあたり、安全対策やリスク管理については特に神経をとがらせる必要を改めて感じた。挑戦したいという強い気持ちが当事者にある一方で、当初の想定と実際体験した感覚とには多少なりともギャップが生じるものであり、それをいかに計画段階で想定し縮めていくかについては、運営幹部の関与が不可欠であると思う。そのためには、たとえ自分が実際に行わない活動であったとしても、当事者に任せておくことなく、積極的に知識習得に務め、関係者との意思疎通を図ることが欠かせない。今後も部が発展していくにつれて、様々な挑戦が行われるであろうが、運営陣には肝に銘じていただきたいと思う。2019年度には沢登りも開始されるようで、さらに活動の幅を広げていくことを期待している。


学外との交流の促進というのが昨今の課題であったが、本年からは日本山岳会学生部に部員が顔を出すようになり、そこでの交流を通してスキルアップを行っている。本年は学外の人たちとの山行も大幅に増え、それは部活全体での情報収集力の強化につながっているだろう。今後とも是非積極的に人を送り出してほしいと思う。


部内運営の円滑化と充実化をはかるため、運営会を設立してから2年が経過したわけであるが、運営幹部が4年生の就活期と重なる今の体制下では、2年生から4年生までが運営に関与するこのシステムは今後とも継続していくであろう。一方で、その際効率化を重視するあまり、運営会での議論を重視して部会での意思疎通がおろそかになり、運営会に参加していない部員が情報格差を感じたり、意見発信をする場が奪われたりするようなことがあってはならない。部則にも定められている通り、あくまでも最終決定機関は部会であることは、常に意識しておく必要がある。本年もそれについては注意していたわけだが、運営会以外の部員と率直な意見交換をする場としての部会の重要性を強く感じることになった。部員全員が部の問題を主体的に考える環境を確保することは、これからも求められるように思う。


1年で入部した当初とは大きく様変わりした山岳部は、これからも着実な発展を遂げていくであろう。もっとも、そこには常に、多様な山登りの志向を可能にする確固たる体制と、それぞれの趣向の違いを受け入れる寛容さもまた無くてはならない。先代から作り続けてきた確立しつつある体制をしっかりと維持発展させると共に、部員のニーズに合わせた年間計画と着実なスキルアップを実現できるよう、これからを担う後輩たちに期待したいまた自分にとって、山岳部OBの方々からのご支援があってこその4年間であった。特に本年は多方面でご協力を賜ることとなり、その存在の有り難さを改めて認識させていただいた。この場を借りて、改めて感謝申し上げたい。聞くところによると、2019年度も多くの新入部員が入部したようである。彼らがさらに充実した4年間を山岳部で送れることを願って、本総括を締めくくることにする。


 2019年5月24日