2017年度 年次報告


 

2017年度主将 内海拓人

 

 

 

 この総括は本来、主将を務めた年度についてまとめるべきものであるが、僕としては主将の任期とは関係なく、4年間通して部で様々な取り組みを行ってきた。そのため、この文章は僕が部に在籍した4年間(20142017年年度)の総括としての色彩が濃くなることを予めご承知いただきたい。

 

 また、これまでの年度総括と比較すると、文量が多くなってしまうかもしれない。適宜小見出しを付けておくので、長すぎると感じた方は興味のある部分を選んで読んでいただければ幸いだ。

 

 

 

4年間の部の変遷〉

 

 僕自身、1年生の5月頃に一度部の体験で川苔山あたりに登ったが、その時すぐには入部しなかった。当時はテニスサークルを課外活動のメインに据えようと考えていたほか、山友会の体験にも顔を出していた。だが、夏休みに参加した富士山ツアーでOBの藤原さんに「とりあえず入っておいて損はない」と熱烈に勧誘され、まぁたまに山に登れればいいかという軽い気持ちで入部した。実はこのとき、僕は高山病にかかって山頂まで辿り着けていない。なぜあの苦しい状況の中で僕は入部を決意したのか…僕自身ずっと疑問なのだが、これもこの部と縁があったからであろう。

 

僕が入部した2014年度は、まだまだ部は主にOBの支援の下での活動を行っていた。僕が入部するきっかけとなった富士山ツアーや日々のFN短大の山行など、部で山に行くときはOBの方々に連れて行ってもらうということがほとんどだった。当時は、自分を含めて部員にまだまだ山の知識がなかったので、OBの方々に山に連れて行っていただけることはありがたく、主にFN短大を通して登山の基礎体力などを身につけることができた。34人ほどの少人数パーティで、下りは走るほどのハイペースで長距離を歩き切る…こうした活動はとてもやりがいと達成感のあるものだった。こうした活動を通して山を歩くことの楽しさを知ると、今度は自分が登りたい山に出かけてみたいと考えるようになった。また、もっと部員を増やせば部により活気が出て楽しい活動ができるのではないか思うようになった。

 

そして、2015年度の春に大々的に新歓活動を行った。新歓山行を3回行ったところ、予想を遥かに上回る人数が入部し、部員数はおよそ倍の20名超えとなった。これには、新歓を行った自分自身が驚き、何よりもとても嬉しかった。この年から日頃の山行は学生のみで計画・実施するようになり、夏にはテント泊山行も行うようになった。今思い返せば、まだまだ登山の知識も未熟で無謀な計画もあったが、新品のザックに新品のテントを詰め込み、初めて経験する荷物の重さに苦労しながらも雲取山や北岳に登頂できたことは、とても達成感があり自信になった。今でも、北岳山頂から見た初めてのアルプスの稜線の美しさを忘れることはできない。

 

2016年度も新歓は成功し、安定して部員を獲得することができた。また、活動内容としても、夏は前年より泊数を伸ばしてテント泊を行うなど、部としての成長を感じることができた。しかし一方で、前年度に入部した部員の中には、定着せず活動に姿を見せなくなってしまう者も複数いた。日頃の活動においても、山行直前に参加をキャンセルする部員が出る、部会に出席する部員が半分に満たないなど、「自由」を売りに活動することの弊害も見え始めた。ここで僕は、この部を今後も存続し続ける団体にするためには、部のあり方を少々見直す必要があると考えるようになった。このことが、部の運営に責任をもって取り組むコアメンバーとしての「運営会」の設置、山行参加の義務化、訓練山行と夏合宿の設定など、現在の部のシステムの構築につながった。

 

部の体制を見直して迎えた2017年度、今まで「自由」を売りに新歓を行ってきただけに、部員を獲得できるか相当不安であった。しかし、予想はいい意味で裏切られ、今まで以上に活動に対して意欲的な部員を迎え入れることができた。学期中に行うテント泊の訓練山行には、パーティを2つ作らなければならないほど多くの部員が参加するようになった。これは部員のレベルの底上げに寄与し、今の下級生はずいぶんと歩く力が付いたと実感している。夏合宿はレベル別に2回実施した。主に初心者を対象とした北岳合宿では、2年前の自分と同じように初めてアルプスの稜線を見て楽しそうな顔をしている後輩の姿を見て、頑張って連れてきた甲斐があったと感じ嬉しかった。また、上級生向けの雲ノ平合宿では最長の4泊(予定では5泊だったが、悪天候のため短縮。)の行程を8人で踏破することができた。部としての山行・個人山行共に実施回数は格段に増えたほか、部内に登攀チームが結成されるなど活動の多様化も進んだ。そして、運営会制度をはじめとする部の運営システムも定着し、さらに改善が進んだ。

 

結果としては、部の再建は僕の予想以上に急速に進み、安心して部を後輩に託して卒業できる状態になったといえる。こうして4年間を振り返ると、僕は1年生の頃からずいぶんと自分のやりたいことをやらせてもらっていた。寛容に僕を見守り、大事な場面では様々なサポートをしてくださった先輩方にはただただ感謝している。

 

 

 

〈部の運営を振り返って〉

 

 新たな部の体制をつくるにあたり試行錯誤を繰り返す中で、部の運営を行うために重要だと思ったことがいくつかある。まず、部の活動を活性化させるためには何よりも部員を大切にしなければならない。私が2年生のときに部員数が大幅に増えてから、明らかに活動は活発になった。やはり、一定以上の部員数を確保することは部の活動を継続していく上で絶対に欠かせない。また、様々な趣味嗜好の部員がいた方が団体として面白く、活動内容の多様化の可能性も高まる。この部の歴史を振り返れば、今のように部員が安定的に確保できていることは決して当たり前のことではない。山岳部の新歓活動は一筋縄ではいかない部分もあるが、部員は部の最も大切な財産であるという意識を持ち、今後も新歓活動には手を抜かないで取り組んでほしい。

 

次に、部の運営にはできる限り多くの部員が関与することが重要である。僕が2年生だった頃を振り返ると、ほぼ全ての山行計画や部の運営を一部の先輩方や僕だけで行ってしまっていた。こうした運営体制では、せっかく多くの部員が集まって登山に取り組む意味がないし、部に所属する意義を見出せなくなる部員も出てきてしまうかもしれない。多くの部員が運営に参加して多様な意見を取り入れることで、組織や活動をさらに活発にすることができる。再建当初の部と比べれば、現在の部はこうした運営を実現しつつあると感じるので、今後もぜひ継続してもらいたい。

 

ここで、上記のこととも関連してくるが、最近僕は運営会制度にはひょっとしたら見直しの余地もあるのではないかと考えている。運営会は元々僕が考案した制度で、部の運営のコアメンバーを設定することで、運営の効率化や活性化を目指すものである。しかしこれはあくまでも、入部年度と学年が一致しない部員が多いという特殊な状況の中、部の組織をほぼゼロから作るために必要な制度であった。現在は、山岳部にきちんと軸足を置く部員が1年生のときから活動を行っており、部の運営体制も整いつつある。そのため、一般的な部活によく見られるように、ある学年を執行代として設定しても問題はないように思われる。運営会制度の欠点は、部の運営に関わる者と関わらない者の差が大きくなることにある。一方、ある学年が運営の中心となることを定めれば、全ての部員が運営に積極的に参加できることとなる。

 

一例として運営会制度を挙げたが、現在の部の運営体制には、僕の学年で試行的に採用したものや断行したものも多い。そのため、これからの部員のみんなには、現在の部の制度に縛られず、より良い部の形を追い求め続けてもらいたい。

 

 

 

〈部活動で登山をする意義〉

 

 僕が部のあるべき姿を考えるにあたって常に意識してきたことは、部活動で登山をする意義は何か、ということだ。ただ山に登るという行為は、部活に入らなくても一人でできる。なぜわざわざ部活で登山をするのか、そこに部活の目指すべき形のヒントがあるのではないかと考えてきた。僕なりに考えた部活で登山をする意義は2つある。

 

 1つ目は、一人では登ることが難しい山に登ることができるようになるということだ。例えば、装備や食料が増える長期の縦走などを考えれば、複数人で挑んだ方が装備を分担できるなど、単独行の場合よりも個々人の負担は少ない。このように、複数人でパーティを組むことで山行を成功させる可能性を高めることができる場面は多い。また、部のような組織に属することによって登山技術やノウハウの伝承を受けることができ、個人としてもレベルアップすることができる。この点、わが部は一度先輩からの技術の伝承が途絶えてしまっているため、まだまだ部の教育的機能が弱く、先輩が後輩に何かを教えるという意識が薄いと感じる。集団で取り組んでいるからこそ登れる山があるということ、部という組織が部員それぞれのレベルアップに欠かせない場所であるということを考えれば、部の活動として何をしていくべきか見えてくるのではないか。

 

 2つ目は、チームで登山に取り組むこと自体に醍醐味があるということだ。人によって考え方は様々で好みも異なると思うが、僕はパーティを組んで行う登山には単独行にはない面白さがあると考えている。現在のわが部には様々な登山の志向をもった部員がおり、必ずしも全員が先鋭的な内容の山行を求めているわけではないし、登る山のレベル自体を急激に引き上げることも難しい。こうした中で部の山行を充実したものとするためには、チームとして登山を行うことによって得られる学びや楽しさを最大化することも重要であると考えられる。具体的には、部内での山行計画の立て方、山行における係分担やパーティ分けなど、山に行く前も山に行ってからも工夫できる点はたくさんあると思う。またこのことは、日々の部の運営の方法を考える上でも非常に大切ではないか。

 

 

 

〈まとめ〉

 

僕がこの部で4年間活動を続けてきた理由は2つある。1つ目の理由はもちろん、山が好きだからである。この4年間様々な山に登ってきて、改めて自分は登山が好きだと実感した。ただ、それだけではここまで部について考えて、様々なことに取り組むことはできなかったと思う。やはり2つ目の理由は、この部にいる先輩・同期・後輩が好きで、だからこそこの部をより安全により良い山に登ることができ、そして居心地が良い部にしたいと考えていたからである。みんな温かい部員ばかりで、部員同士が密に関われるような規模感で活動できることが、わが部の一番良いところだと思う。僕はこれからもこの部で出会った人たちとの縁を大切にしていきたいし、現役の部員のみんなも部員同士のつながりを大切にしてもらえたら嬉しい。

 

ここまで僕が部で活動できたのは、様々な面から部を支援し続けて下さる針葉樹会の皆様、部の基盤を築いてくださった先輩方、一緒に活動に取り組んでくれた同期、僕のわがままにも付いてきてくれた後輩、皆さんの助けがあったからに他ならない。改めて感謝申し上げます。